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「満足した顧客は最高のセールスマン」(読み人知らず)。これが口コミ商法の第一条でありすべてである。例外はない。修正条項もない。「満足した」とは「商品についての知識」についての形容であり、すなわち「商品情報」についての言及である。羊の第一公理を思い出そう。情報のないメッセージは伝わらない。商品情報を含まない「口コミ」情報はノイズにすぎない。
こんな単純なことが、天野賢一さんには理解できないようだ。たとえば、彼の署名記事「口コミ商法 ブログで進化」(日経MJ 2006.4.14)。その冒頭で彼は次のように語る。「購入者が自分の満足や感動を別の人に伝えてこそ、大きな消費トレンドに育つ。モノを売る販路より、買い手による推奨の流れをスムーズにすることが、売れる商品の秘訣となる。そんな消費者の『心酔』を媒介する主役はブログ」(同)。大きな消費トレンドに育つかどうかは、「満足」や「感動」の中身による。「別の人に伝え」ること(口コミ)はひとつの手段だ。ここまでは目をつぶってもいい、天野さん。「消費者の『心酔』を媒介する主役はブログ」も、まあ、おまけしましょう。しかし、「売れる商品の秘訣」が「販路」より「推奨」にあるというのは、いただけない。売れる秘訣を、一気に「ブログ」に結びつける論理展開には無理がある。
コミュニティ・サイトの運用実績を武器に、 「ファンサイト・マーケティング」で売り出した日野佳恵子さん(ハーストーリー代表)も勘違い組の一人だ。ファンサイトとは何か、著書の中で彼女はこう答える。「企業が自社ファン(顧客)とより深いかかわりを持ちながら、なおかつ、市場の変化をキャッチし、マーケティング機能として価値を見出すことのできるコミュニティ性の高いサイト。それを『ファンサイト』と呼ぶことで、従来言われてきた『コミュニティサイトは儲からない』というイメージを払拭したい」(ファンサイト・マーケティング)。察するに、ファンサイトとは「儲かるコミュニティサイト」のことらしい。
コミュニティサイトは儲からないのか?その通り。ミレニアムを前にしたアメリカでのトライアルからすでに結論はでていた。(一企業がマーケティング活動の一環として運営する)コミュニティサイトは、維持運営に莫大な費用がかかる。その割に成果がはっきりみえてこない。効いているかどうかもわからない。2000年に上梓された「ネットコミュニティ戦略」(エイミー・ジョー・キム)は、できてはつぶれた瓦礫の山の中から、ネットコミュニティを成功に導くための、ただひとつ方程式を見つけ出していた。「成功はどう評価されるのか?」。これを解くことができるのは、サイトのオーナーだけである。日野さんの主張するところを要約すれば「コミュニティサイトの費用対効果は、本業発展・本業貢献の度合いで考えなさい」ということになる。もっともらしいが、仔細に検討してみれば、どの段階でのどんな成果が本業につがっているのか、さっぱり謎である。エイミーの方程式によれば、そんなコミュニティサイトは難破する。
もう一度言おう。「満足した」顧客の口コミだけが有効なのであって、「口コミ」が顧客満足を生み出すわけではない。「口コミマーケティングの重要性が増したのはネット社会の進展が背景」(天野)なのは確かだが、だからといって、ブログを操ってもヒット商品が生まれるわけではない。企業のコミュニティサイト(ファンサイト)の成功事例として「アマゾン」を加えるのは勝手だが、それでは「企業と顧客がWin-Winになるコミュニティサイトの新しいかたち」(日野)を提示したことにはならない。
関連記事:
評価高まる口コミ型マーケティング、業界も急成長(HOTWIRED 2005.3.22)

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