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特ネタ本ライブラリー第五回は、西尾忠久の「かぶと虫の図版100選」(1970年)である。
 かぶと虫の図版100選 (1970年) 西尾 忠久 (編集)
商品の詳細:とくに断りのない限りデータはアマゾンから(2007.11.30現在) ・単行本:268ページ ・出版社:誠文堂新光社 (1970) ・ASIN: B000J9Q8FI ・定価:420円(税込み換算) ・売価:6050円(税込み)※ヤフオク 2007.11.24 ・P値:5630円 ・D値:1440% * P値(プレミア指数)=売価と定価との差額(単位:円) *D値(乖離指数)=定価に対する売価の割合(単位:%)
本書は、DDBマニアであり、世界の一流品評論家でもあり、広告制作会社アド・エンジニアーズの創始者である西尾忠久が、アメリカの広告代理店DDBが手がけたVWビートルの広告(1959年~1969年)から100本選んで訳を付けて紹介した本である。西尾には本書以外にも、先行する編著書として「フォルクスワーゲンの広告キャンペーン 」(1963年・MP価格29800円)、本書の焼き直しである「企画のお手本―VWビートルによる発想トレーニング副読本」(1986年・MP価格14999円)の2冊がある。特ネタ本としてはどれを選んでもいいのだが、掲載された広告が一番多いこととカラー写真が豊富なことをもって、本書を右代表とする。
さて、アド・エンジニアーズのサイトでも西尾コレクションの一部が紹介されているのだが、そのまえがきで彼はこう述べている。
1959年から76年までつづいた一連の広告は、カビ臭くなるどころか、今なお、広告の理想とまで称えられています。かりに“アドバタイジング・オブ・ ザ・センチュリー”なる賞が選考されたら、今世紀を代表する広告に輝くのは間違いないと私はにらんでいます。 こうしたVWビートルの広告とはどのようなものか。その表現とは? 発想とは? それをあなたの目でたしかめていただきたいのです。 私はVWビートルの広告から、あふれるほど多くの事柄をまなびました。たとえば次のようなことです。
広告は楽しくなければいけない。 どの作品でもいいから、みてください。人をギョッとさせる広告も多い。けれど、すい寄せられるようにして読むと、どれも楽しくてファンになってしまう。それがVWビートルの広告です。 最高の広告は、相手の人生観を変えます。 「Think Small 小さいことが理想」という広告が好例です。有名な作品ですね。大きくて立派な自動車を持つことがステータスシンボルだった時代に、正反対のことを訴えたのです。 最初のブランドを作るのは、ファクトです。 ふんだんにおカネが使えるなら、イメージだけで押し通す戦略もアリです。しかし担当した広告会社、米国DDB社はその方法を選びませんでした(あまり予算がなかったのです)。
世界中のコピーライターやアートディレクターに見ていただきたい。ホームページで公開することにしたのは、そのためです。広告ばかりでなく、企画や商品開発に携わるすべての人におすすめしたい。クルマの広告と見ないで、創造的な仕事をするためのお手本にしていただければと思います。 - Advertisement of VW Beetle
この発言は2002年のものだが、1970年の本書の出版意図もまったくこの通りであったに違いない。ただし、西尾は誤解しているが、広告は楽しくなければいけないものでもないし、相手の人生観を変えなくてもかまわない。広告は実用である。実用の世界では「正しいか、正しくないか」ではなく「効くか、効かないか」が問われるべきである。VWビートルの広告は、よく効いた。これをお手本にしない手はない。
もちろん、有効な広告の前に、有効なプロダクト・デザインが必要である。「最初のブランドを作るのは、ファクト」(西尾)であることを、DDBのクリエイター達は十分に理解していた。残された課題は、それをどう見せるか、だ。たとえふんだんにお金が使えたとしても、彼らはイメージだけで押し通す戦略はとらなかった。ファクト(商品情報)から目をそらしてはいけない。必要なのはファクトの新しい「優先順位」とその「組み合わせ」だけだ。彼らはその試みを17年間にわたって250回以上も続けた。本書はその記録(の一端)である。ここでは、「新しいアイデア」とはどういうものであって、それはどうすれば生み出せるのか、その秘密が惜しげもなく明かされている。
「われわれは、VWのつくり方をすっかりのみ込むことができ、テーマは何にすべきかを知ったのです。われわれは、何がこの車を他の車と区別させているのかを知りました。われわれは、何を米国の大衆に告げなければならないかを知ったのです。われわれは、いわなければなりませんでした。 『これは正直な車だ』---これが、われわれのセリング・プロポジション(広告命題)でした。 われわれは、使用される部品の品質を見ました。われわれは、間違いを避けるためにとられている、信じられないぐらいの予防措置を見ました。われわれは、車を何回も引き返えらせ、その代わりにお客さまからは決して突き返されることのないようにする、莫大なお金のかかった検査システムを見ました。われわれは、この信じられないぐらいの安い値段で、このすばらしい品質を可能ならしめている印象的な能率を見ました。われわれは、作業員たちの、定められた基準よりもずっと自分をすぐれたものにしている熟練の誇りを見ました。そうです。これは正直な車です。われわれは、セリング・プロポジションを見つけたのです」 これは、バーンバック会長が1962年の4A(全米広告業者協会)の総会で講演したものの一部である。ぼくは、つい最近まで、これらの言葉のすべてを信じていた。これこそ、VWの広告キャンペーンの本質だと思っていた。 - 「かぶと虫の図版100選」テキスト(5)(西尾忠久)
 小さいことが理想 きっちりつめたら、ニューヨーク大学の18人の学生がサン・ルーフVWに乗れました。フォルクスワーゲンは、家庭向きに考えて大きさが決められています。おかあさん、おとうさん、それに育ちざかりのこども3人というのが、 この車にふさわしい定員です。 エコノミイ・ランで、 VWは 1リットルあたり 平均21km強の記録を出しました。あなたには、ちょっと無理な数字です。プロのドライバーは商売上のすてきな秘けつを持っているんですから。(お知りになりたい? ではVWBox #65 Englewood, N.J.へお手紙をどうぞ)。ガソリンはレギュラー、また、オイルのことは次の交換時期までお忘れください。 VWは在来の車より全長が4フィート短くできています(とはいっても、レッグ・ルームは同じくらいあります)。 ほかの車が混雑したところをぐるぐる巡りしている間に、あなたはほんの狭い場所にも駐車できるんです。 VWのスペア部品は格安です。新しいフロント・フェンダーは(VW特約店で)21.75ドル、シリンダー・ヘッドは19.95ドル、品質がよいのでめったに必要とはしませんが。 新しいフォルクスワーゲン・セダンは1,565ドル、ラジオ, サイド・ビュー・ミラーのほか、あなたがほんとうに必要なものは全部ついています。 1959年には、12万人のアメリカ人が、小さいほうが理想と考えてVWを買いました。 ここのところを考えてみてください。(福田成美訳) - 「かぶと虫の図版100選」テキスト(2)より転載
特ネタ本とは: マーケティングなど実学の世界では、絶版あるいは何らかの理由で重版されないために、とうの昔に書店から姿を消しているにもかかわらず、志ある読者に今でも読み継がれている書物がある。本そのものの価値(稀購本)や作家の価値(コレクション)より、 本に書かれている中身(ネタ)に価値があるので、初版がありがたがられるわけでもない。めったに出てこないので中古マーケットでは高値が付いているが、復刊されれば二足三文となる。これを「特ネタ本」と呼ぼう。(羊)
[特ネタ本ライブラリー]
第四回 小売の説得術---モノ買わぬ消費者とのコミュニケーション 第三回 市場の壁を打ち破る「プロ広告作法」 第二回「売る」広告 第一回 ものいう広告―ペイするコピー作法 特ネタ本-読み継がれる秘伝の書(予告)
[本日の知恵のネットワークス]
創造と環境 38年昔&いま(Chuukyuu)
William Bernbach, The Trace of @dvertising Giants!
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