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日付 2008/10/20 12:17
 
タイトル 大統領選とマイクロターゲティング(羊)
 
カテゴリ
One to One 再発見
 

米広告主協会のカンファレンスで広告主・広告会社の幹部などの投票により決まるAdAgeの今年のMarketer of the Yearは、Apple、Nikeなどを破り、民主党大統領候補のBarack Obama上院議員が選ばれた。比較的知られていない議員から大統領候補へ比較的短期間に達成したことで選ばれたようだ。
- AdAge、今年のマーケター・オブ・ザ・イヤーは、大統領候補オバマ上院議員(Ad Innovator 2008.10.18)

というわけで、「マイクロターゲティング」である。おっとその前に、オバマとマーケティングとマイクロターゲティングの結びつきを見ておく。旧聞であるが、バラクとヒラリーが予備選で火花を散らしていた頃のこんな記事

民主党指名候補の座を目指すバラク・オバマ上院議員などは、州から州へ、予備選から予備選へ選挙戦を展開していくにあたり、マイクロターゲティングを活用 して、基本的かつ本質的な可変要素を大量に割り出し、ヒラリー・クリントン上院議員と必死の攻防を繰り広げているのである。
- 米大統領選で活躍する予測分析ツール――候補者らが有権者層の把握に利用(IT media 2008.03.13)

で、マイクロターゲティングとはどんなものだろうか。同じ記事で記者(Renee Boucher Ferguson,eWEEK)は次のようにまとめている。

一般的に顧客選別とは、人口動態、志向、購買パターン、購入行動といった特性が共通する消費者もしくは組織をグループ化して、企業などが顧客を包括的に理解し、ひいてはより能率的なマーケティングを行うのを助ける手法を指す。Strategic Telemetryや、米国南部諸州を対象とした政治コンサルティング企業のSPIN(Southern Political Information Network)は、これを同じ概念を政治分野に持ち込んでいる。
- 同(原文ママ)

なぜ、大金を注ぎ込んでこんな面倒なことをやるのだろうか。「有権者を振り向かせたいなら、彼らが自陣候補者に確実に投票するようしむけなければならない」(Strategic Telemetryの創立者で現社長のケン・ストラスマ氏)からだ。実際にどんなことをやってるかと言うと

マイクロターゲティングでは、各州の有権者データベースや人口調査資料といったさまざまなソースから情報を取得し、InfoUSAおよびExperian などの企業が提供するマーケティングデータと組み合わせて、所定地域における有権者の基本像を浮かび上がらせる。Strategic Telemetryは、SPSSの「Clementine」データマイニングおよび予測分析ツールを独自開発したアルゴリズムと併用して、自陣に引き入れられる可能性の最も高い無党派層に近づく最良の方法を模索している。
- 同(原文ママ)

どこかで聞いたことがあると思ったら、これは紛れもなく「行動ターゲティング」の手法である。おさらいしておく。

行動ターゲティング(Behavioral Targeting)は、POSによる「統計学的な単品管理」に遅れて、その足跡をたどりながら発達してきた「統計学的な顧客管理」手法である。POSでは、その日の天候や歳時、立地条件、陳列方法などいくつかの要因を組み合わせて販売動向を割り出し、商品一品ごとの入りと出を一定の精度で管理する。商品は入と出の観測値としてのみ扱われ、商品そのものの属性はむしろ不要である。欲しいのは予測の精度を決める統計学的な母数なのだ。
- 行動ターゲティングの秘密(羊)

この考え方を一人一人の顧客の購買(行動)に当てはめたものが、行動ターゲティングということになる。欲しいのは買うか・買わないかの予測である。行動ターゲティング技術世界最大手の米レベニューサイエンス社のCEOビル・ゴスマンによれば、同社はクッキーを使って、ネットサーフィンの傾向や消費するメディアなどの情報を入手、IPデータを使い所在地域なども把握できるという。月に300億ページビューと、1日に10億件の行動履歴のデータを取得し、1億人から1億1000 万人のユニークユーザーの90日間の行動履歴をデータベース化している。データマイニング、人工知能といった技術が意味を持つためには、これくらいの規模が不可欠だということだ。

マイクロターゲティングや行動ターゲティングがなぜ必要とされ始めたのかと言うと、従来の手法では予測が難しくなったからであり、ITと統計学的手法を取り入れることで予測の精度を上げることが可能になったからである。新旧の手法の違いを乱暴にくくってしまうと、「全国一律」(旧)「地域密着」(新)ということになる。

実をいうと、オバマが(もちろん、対立候補も)実践したことは大したことでもなんでもない。オハイオ州で行われた予備選挙は、その好例だ。オバマ氏、クリントン氏の両陣営は、近年に大量の失業者を出した同州の事情を考慮して、経済問題に焦点を当てたキャンペーンを展開したのである。考慮したのは、オハイオでは失業問題だったが、カリフォルニアでは妊娠中絶であった。つまり、州によって「何を言うか」の優先順位を変えているのである。この手法は、広告キャッチフレーズを考え出す羊の手順と大差はない。というか、まったく同じだ。その手順とは、1)箇条書き 2) 優先順位 3) 選択 4) 検査 であった。

オバマ陣営にはすでに、訴求するべき論点=政策(これを訴求ポイントと呼ぼう)の長いリストができている。そのリストにランクをつけるのである。2つの訴求ポイントを比べて優先する方を上に持ってくる。これを繰り返せば、一番重要なポイントが一番上にくるはずである。

それでは「優先順位を決める基準は何か」ということになろう。2つを比べて「こちらの訴求ポイントの方が順位は上だ」と判断する基準があれば、この手順はそれほど悩ましい手順ではない。ここで「だれに」の出番となる。この「広告」は「だれに」向ってメッセージを届けようとしているのか、この商品は「だれに」買っていただきたいのか、この商品の「見込客」はだれか。訴求ポイントの順位付けには「消費者」の視点が欠かせない。
- だれに ものを いうか(羊)

上記「商品」を「政策」に、「消費者」を「有権者」に換えれば、マイクロターゲティングの手法が見えてくる。「だれに」「何を」訴えるのか、その順位のために大金を払っているのである。もちろん、費用対効果を十分に考慮した上で。

ところで、「何を言うか」は、米大統領選では20ぐらいの項目にリスト化されるようだ。ニューヨークタイムズでは、現在12項目が一覧になっていて両陣営の論点を比較できるようになっている。
・Abortion 
・Climate Change 
・Economy/Taxes 
・Education 
・Energy 
・Health Care 
・Housing 
・Immigration 
・Iran 
・Iraq 
・Judges 
・Science/Technology
- Election Guide 2008(New York Times)

もちろんであるが、州によって異なるのは「優先順位」であって「何を」の中身ではない。ひとつの偽装が企業の死を招いた例はいくらでもある。大統領選においても事情は同じだ。

「インターネットがあまねく普及した今日、候補者が1つの問題について矛盾した意見を口にするのは厳禁となった。ささいなことでも、あっという間に広まってしまうからだ。したがって、候補者の主張を都合よく細工しようなどとはゆめゆめ思ってはならないが、どの程度までなら変えられるのかは推し量ることがで きる」(ストラスマ氏)

[関連サイト]

行動ターゲティングの秘密(羊)

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投稿者 CMO
 
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