ブログ記事詳細
日付 2009/08/28 15:13
 
タイトル Let-it-go(ほっとけ)メディアの出現(羊)
 
カテゴリ
インターネットCMの短い歴史
 

インターネットCMの短い歴史(羊):その13

ユーチューブの歴史は足かけても5年しかさかのぼれない。設立は2005年2月、ベンチャーキャピタルの出資を受けてその年の12月には公式にサービス開始。翌年10月にグーグルが買収。2007年5月21日時点で8000万の動画があり、日に35000もの動画がアップロードされていることがプレスリリースで発表された。今頃は1億を軽く超えているだろう。一言でいうと「動画共有サイト」である。


Broadcast Yourself

ユーチューブの大成功で、発展途上にあったインターネットCMは猛烈な影響を受けることになる。ブレーキがかかったというわけではない。進むべき道を厳しく制限されたのだ。

ネットCM元年に期待されたリッチメディア広告は、大きく分けて3つある。 1)ビデオ・ストリーミング 2)エクスパンド・バナー 3)インタラクティブ(ゲーム)の3つだ。


スパイダーマン2のエクスパンド・バナー

1)のビデオは、テレビCMがあるならネット用にわざわざ作りかえるまでもない。15秒スポットをそのまま流せば事足りる。ロングバージョンを見て欲しければ、ランディング・ページに貼り付けておけばよい。これは広告代理店にとっても朗報だった。クロスメディアの中核は依然としてテレビCMである。ネットはおまけだ。場合により、テレビでは放映できないロングバージョンを制作する予算も獲得できる。というわけで、2004年の2月にはペプシ、AT&T、ホンダアメリカ、マクドナルド、ワーナーそしてボネージが、ハイ・トラフィックの15のサイトでテレビ用につくられたCMを流していた(USA TODAY)

ところが、このムーブメントは長くは続かなかった。テレビ視聴者もそうだがネット視聴者はとくに、見たいものしか見ない。受動視聴(テレビ)でも飛ばしたいCMを、わざわざクリックして見るお人好しはいない。というわけで、テレビCMの流用は、スーパーボールのような話題を競い合うだけのその場限りの起用が目立ってきた。

しかも、ネットで受けるネタといえば「身近でB級感があるもの」(中川淳一郎)に限られている。話題になったとしても、そんな広告をわざわざ探してクリックする視聴者もいない。話題は、広告メディア(ヤフーなど)をパスしてクチコミで広まるのである。企業の思いとは関係なく、「身近でB級感がある」広告だけが、突然ユーチューブにあふれだした。ユーチューブがテレビCMのリサイクルを一手に引き受けるようになったのである。

Home ab workout: crunch exercise for 6-pack abs

「TV commercial」で検索した中で、最も再生回数の多いビデオ(8月28日現在、7,332,305 回。投稿は2年前)

もっと悪いことに、ユーチューブは「Let-it-go(ほっとけ)メディア」だ。これがSNS(共有サイト)ということだが、噂が「クチコミ」で広がる「場」なのだ。一企業にできることは、クチコミで広がる噂が、良い噂であることを祈るだけだ。企業がコントロールできるメディアではない。

P&Gのアラン・ラフリーとGEのジェフ・イメルトがフォーチュン誌主催の対談で、新たに出現したYouTubeに代表されるデジタルメディアについて語っています。
GEはNBCという旧メディアを持っているのですが、iVillageという女性向けのサイトを最近買収したばかりです。コントロールし、予測し、 儲けの出るサイトを持っているから、「(YouTubeのようなパワフルなブームに)乗り遅れそうかというと、たぶんね」と答えている。
一方のラフリーは、コントロールできないことを理解しなければならないというスタンスです。「"Let it go" とは、P&Gのイメージに他者が影響を与えることを傍観しなければならないことに慣れなければならないという意味である。だからもし P&Gに対してポジティブなビデオがYouTubeに掲載されたら、P&Gは多くの人がそれを見てくれと願うだけ。もしそれが批判的だったら、わずかな人しか見ないでくれと願うだけだ。これが今我々がいる世界なのだ」。
- アラン・ラフリーの『Let it Go』(鈴木敏仁のRetailweb)

道を閉ざされたのはテレビCMのリサイクルで、インターネットCM全般ではない。というわけで、インターネットCMとくにビデオは、テレビCMと違う道を歩むようになった。

連載:インターネットCMの短い歴史(羊):
服従するニワトリ
2004年のキーワード
Flashビデオ、2004年のゲームチェンジャー
アップル、アマゾン、クロスメディア
リッチメディア広告の現代的諸相・海外編
リッチメディア広告の現代的諸相
クロスメディア
広告量の減少とインパクトを求める傾向
双方向テレビ
ブロードバンドコンテンツ
インターネットCMの夜明け前
インターネットCMの短い歴史(序)



人気blogRankingに参加しています。
上のバナーのクリックをお願いします。

投稿者 CMO
 
この記事の
トラックバックURL
http://www.uportal.ne.jp/WisdomNetworks/Blog/archive/2009/08/28/weblogentry-733/trackback
前のタイトル 服従するニワトリ(羊)
次のタイトル ユーチューブと折り合いをつける(羊)